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頑張らないために頑張る

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僕にとって1月25日は特別な日だ。

 

僕には親友がいた。彼の誕生日が1月25日である。少し思い出に耽ってみる。

 

出会いは小学4年生。僕の通っている小学校に彼が転校してきた。ベイビーフェイスの明るい男子、だけどちょっとさみしげな雰囲気を漂わせている不思議な男だった。後に知るのだが、転校理由は両親の離婚だったようだ。

彼とは妙にウマがあった。すぐに友だちになり、学校終わりにお互いの家を行きかいテレビゲームをしていた記憶がある。月一ぐらいで新しいゲームを買ってはお互い交換して遊んでいた。

 

中学生。特に相談したわけではないが僕と彼は柔道部に入部する。屈強な先輩たちのなかで、150cm にもみたないチビがふたり受け身・乱取り・筋トレと同じ時間を過ごしていた。マットの上でパワーボムを食らわせたこともあったし、バックドップを食らわされたこともあった。寝技では何度も落としたし落とされた。ふり返ると意外と野蛮な中学生活だったな(笑)

 

高校生。彼は引き続き柔道部、僕は文化系の部活に入部する。とはいえ同じクラスで常につるんでいる仲間だった。毎週末、友人宅で一緒にテレビゲームをして、同じ学習塾に通い、塾帰りのヴァンパイアハンターに青春を捧げていた。

そういえば彼の心の闇を垣間見た出来事がひとつある。彼には小学校から好きだった女子がいた。清楚なお嬢様タイプの女子である。僕に彼女ができたこともあり「お前も彼女作れよー」とハッパをかけると、彼は逡巡を繰り返したのちに告白し OK をもらう。

「ダブルデートでもしようぜ」みたいな話をしていた矢先、彼はわずか3日で彼女を振った。話を聞いてみると、思い描いていた彼女じゃなかったわけではない。「俺と一緒にいても彼女はしあわせになれない」と彼は言っていた。

 

大学生。色々あったが同じ大学に通うことになる。一人暮らし同士で開放感を得た僕たちは、酒と煙草を覚え、安い酒で潰れるまで飲み明かした。夢をかたり、音楽をかたり、科学技術をかたり、政治をかたり、宗教をかたり、思い出をかたり、女性の好みをかたり、性癖をかたった。はじめて六本木のクラブに行き、圧倒されてスゴスゴと帰ってきたこともある(笑)

酒に酔ったとき彼は言った。「自分に将来はない」と。「あの父親の血が流れているから、誰かと結婚して幸せな家庭を築き上げることはできない」と。彼の父親に会ったことはないので詳しいことは分からないが、「父親と会ってくる」といった次の日の彼の顔の腫れ具合をみると、どんな父親だったのか想像はできる。

 

ある年のゴールデンウィーク、彼は自殺する。

突然「実家に帰る」といい、数日後、海を一望できる実家近郊の丘で首を吊った。遺書などは特になかったらしい。一人暮らししていた部屋には洗濯物が干したままだったので、死ぬために帰ったわけではなく衝動的だったのかもしれない。いまではもう自殺の理由を知ることはできない。

 

僕だったら彼の自殺を止められたのだろうか。柔道部で鍛え上げ、肉体的に屈強な彼ではあるが、精神的に繊細だったことは知っていた。陽気な反面、たまに垣間見せる闇があることも知っていた。いま思えば兆候はあったのかもしれない。

僕の人生で後悔することがあるとすると、彼の自殺を止められなかったことだ。あのゴールデンウォークに遊びにでも誘っていたら、共有できる将来の夢を作っていれば、幸せな家庭を築くことだけが人生ではないと言っていれば、たられば、たられば、、。

 

たまに実家に帰ったときには彼のお墓を訪ねる。彼が好きだった海を一望できるロケーションだ。そして失われた黄金時代に想いをはせる。人として尊敬していた、努力できる才能が羨ましかった、バカやっているのが楽しかった、もっといっしょに居たかった、同じ未来を歩みたかった。いまだ想いは尽きない。

 

彼の分まで生きていこうなんて言いたくはないが、もしかしたら僕は「あの後、楽しいこといっぱいあったのに死んじまうとかばかじゃねーの?w」というために生きているのかもしれない。

 

いまはただ、安らかな冥福を祈る。