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頑張らないために頑張る

「なんのために生きているのか?」デスマーチはその名の通り死への行進だ

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フィクション小説 ユーザ SE の真実 05 話。全編は こちら

 

同棲していた彼女に愛想を尽かされて以降、僕の生活はすさみ切っていた。

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まー、すさむよね、、

唯一の楽しみは食べることだった

デスマーチプロジェクトに巻き込まれ昼夜を問わずテスターを繰り返す日々、僕の楽しみは食べることだけだった。食べることといっても豪華なレストランなどではなく、ラーメン、牛丼、コンビニ弁当である。終電で帰るとき僕の手にはおよそ 3 人分のコンビニ弁当がぶらさがっていた。

 

一人になった部屋で 3 人分のコンビニ弁当をむさぼり食べる。もはや食事と言うのもはばかれる光景だが、ただ何かを食べることだけが僕に「生きていること」を感じさせた。

 

「なんのために生きているんだろう?」

「僕が夢見た仕事はこんな仕事なのだろうか?」

「僕はどこで間違ったのだろうか?」

 

そんな想いをコンビニ弁当とともに胃袋の中に押し込め一通り空腹感を満たしたあと、片っ端からシステム関連の書籍を読み続けていた。

教科書には解決する方法論は載っていない

なにかに迷ったとき、僕は書籍に答えを求めるクセがある。入門書から古典まで広く深く読み続けた。要求工学とはなにか、UMLとはなにか、プロジェクトマネジメントの勘所はどこか、大量の書籍のなかからデスマーチを終わらせるヒントを得ようと必死にもがいていた。いま思えばユーザ SE として仕事をしていく上での基礎知識はここで身に付けたのだと思う。

 

「要件をキチンと整理することが大切です」

そんな事はわかっている。

「後工程になればなるほど仕様変更の影響は大きくなります」

そんな事はわかっている。

「リスク管理が重要です」

だからそんな事はわかっている。

 

結局、どれだけ書籍をよんでもデスマーチ状態を解決する手段はわからない。読めば読むほどもう手遅れなのだという確信だけがますます強まっていく。

まさに言葉通りのデスマーチ

部屋は汚部屋になっていた。コンビニ弁当の容器、ペットボトル、システム関連の書籍、洗濯していない衣服、ひとりで食べた L サイズのピザ、それらが混在となり足の踏み場もない。

 

身なりも最悪だ。散髪していない髪、10 キロ以上太った身体、ギラついた視線、着古したスーツ。おそらく男性として最も旬な時期を迎えているはずの 20 代半ばの青年は、彼が最もなりたくなかった「満員電車のくたびれたリーマン」そのものに成り果てていた。

 

デスマーチとはその名の通り死への行進だ。およそ人間性というものを奪い去っていく。意思、希望、自由、そんなものはどこか違う世界にあって、ただ鎖に繋がれて無機質な機械室で淡々とコンソールをうち続けるのだ。そして見つけた不具合は仕様変更となり、また誰かの自由を奪っていく。

 

ユーザ側ごときがデスマーチを語るなと言われるかもしれない。確かに終電では帰れる。毎日シャワーを浴びてベッドで寝られる。鬱になるメンバは何人もいたが、過労死に陥った事例はない。いずれにしろ、奴隷たちが足かせの大きさを自慢しているだけの不毛な光景だ。

 

そんなデスマーチを半年続けたある日、突然終わりが訪れるのだった。

 

おわり。

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SE職場の真実 どんづまりから見上げた空

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